mama!milk「初夏の演奏会」2025の記録

Concert at Honen-in temple, Kyoto 2025


演奏|mama!milk


… 序奏
August
Gala de Caras
intermezzo.op 32
Waltz, waltz

… 本奏
3つのサンクチュアリより III.循環 Sanctuary
花々の刹那 Peonia
遥かなるハポネへ Waltz for Hapone
ムルシアのアレグロ Allegro ( * )
12の軌道 Farther, 12 signs
6つの小さな前奏曲より No.6 6 Kleine Präludien ( ** )
雨の月 the moon
エフェメラ Ephemera
静寂 Shijima
孔雀 Kujaku
青 ao
蒼 Azul
ソネス sones
燐光 a Phosphorescence
3つのサンクチュアリより I.清らかに水の湧きいづるところ Sanctuary
アン・オード、とある歌 an Ode

All compositions written by mama!milk
except by ( * ) Santiago de Murcia ( ** ) J.S. Bach

 



食堂協力|酒菓喫茶 かしはて


先日に法然院にて開催された「mama!milk 初夏の演奏会」にて
法然院さんのお庭に湧く『善気水』
貫主しか汲み取ることが許されていない貴重な湧水で淹れたお茶とお白湯を、ささやかにふるまわせていただくお手伝いをさせていただきました。
事前の打ち合わせでは、mama!milkのお2人と、美術を担当されたかなもりゆうこさんが、かしはてにお越しくださり、直前に行かれた祐子さんのイタリア・ギリシャ・イランへの旅のお話を伺う機会がありました。その記憶が、かなもりさんの室礼に静かに息づいていました。

名付けられたのは、

chiaro e scuro / イタリア語で光と闇
光線の緩やかな移行

āb / ペルシャ語で水
空の水、地の水

Anemos / ギリシャ語で風
山と谷を行き来する風

それぞれが、法然院で流れていた空気を映すような、美しい名でした。
当日は、雨の庭に新緑の青葉がいっそう鮮やかに揺れ、蛙の声がリズムを刻み、鳥の声が旋律のように響いていました。
自然のすべてが音楽と呼応し合い、神聖で静かな時間がゆっくりと流れていたように思います。
mama!milkのお2人の音楽は、音と音のあいだの静けさまでも、深く心に染み入るようで——
まるでギリシャの海の呼吸や、イランの風の気配までが、そっと届いてくるようでした。
文筆家・村松美賀子さんがプログラムに寄せてくださった言葉の一節、
「どこかの時空の青い空や、まばゆい朝のように」
という表現が、あの時間そのものを包み込んでいたように感じます。
あの場で、皆さまと音と時間をご一緒できたこと、心よりうれしく思っております。

得能めぐみ(酒菓喫茶かしはて)

 


美術 光としての室礼|かなもりゆうこ



室礼1 ) Anemos / 山と谷を行き来する風


室礼2 ) āb / 空の水、地の水


室礼3 ) chiaro e scuro / 光線の緩やかな移行

 



エッセイ|村松美賀子


mama!milk 初夏の演奏会 於:法然院

3年にわたって、リーフレットにテキストを寄せました。
2023年は、しばしのお休みを経て、mama!milkのおふたり、生駒祐子さんと清水恒輔さんが新たに活動を始められる最初の演奏会でもありました。
それにあたって、法然院の心地よさの源を辿ろうと善気山にいっしょに登りました。その爽快だったこと。浅い春の光や風を感じつつ、はるか遠くまで思いを馳せたひとときでした。そうして、生駒さんと清水さんがひとつ、ひとつをていねいに組みあげてゆくのを眺めながら、文章を書いていきました。
2024年は水のゆくえを知りたいと、地中深くに目を向けて、京都の地下に眠る広大な海のことを。そして今年、2025年は、これまでとこれからのことを。人の時間、生きものの時間、生きものを生かすものたちの循環を。

それぞれ、「mama!milkと法然院」( ※1 )「水をきく」( ※2 )「音の透き間」( ※3 )です。

2025年の演奏会は、天から雨が降りそそぐという日になりました。
ごく薄く靄のかかった方丈庭園では、青葉や石の色もあざやかに、姿のみえないモリアオガエルやうぐいすたちもいきいきとしていて。生駒さんのアコーディオンと清水さんのコントラバスは、少しくぐもったようなやわらかな音色に思えました。
美術作家かなもりゆうこさんの作品は、この風景に溶け込むように繊細にありながら、場のうつろいを引きだし、輝かせていて。
湧き水の「善気水」で、得能めぐみさんがていねいに淹れたお茶は心なしか甘く感じられました。
廊下の足音はしっとり沈みこむように、庭園の池や手水鉢には波紋がいくつも重なっている。雨の演奏会は沁みいるようで、また素敵でした。
リソグラフでのリーフレットの制作に始まって、当日の食堂のしつらいまで、かかわる誰もが気持ちよく、よいものをつくることに集中されていて。それらもふくめて、ほんとうに美しい一連でした。
さまざまな移り変わりを感じながら、年にいちどの文章を書けたこと、至福でした。良い機会をありがとうございました。法然院の貫主・梶田真章さん、法然院のみなさま、ありがとうございました。ご一緒できたみなさま、ありがとうございました。

村松美賀子 (文筆家・編集者)

(※1) NOTE |エッセイ「mama!milkと法然院」2023
(※2) NOTE |エッセイ「水をきく」2024
(※3) NOTE|エッセイ「音の透き間」2025

 

 


リーフレット|デザイン: かなもりゆうこ リソグラフ印刷: hand saw press Kyoto 題字 | Takemura Kappan


 


地図|生駒祐子


法然院の方丈庭園で演奏させていただいている刹那、いつもたくさんの生命力のようなものに守られているような、そして一緒に遊んでもらっているような気持ちになります。

演奏前に、日々のお庭の手入れをされていらっしゃる新居万太さんのお話を聞くことも楽しみの一つです。
境内の草引き作業に参加させていただいたり、方丈から眺める庭園の向こう側、つまり善気山を歩いたり。

この場に触れたり、知ったりする毎に楽しくなり、地理院地図をトレースしてみました。
このような場所を流れる風や水が、私たちの営みを育み、音楽にもなってゆくのだと腑に落ちました。

 


※ Created by editing GSI Maps 2024 Yuko Ikoma 

 



photo : Kanamori Yuko at Honen-in temple 2024, RISOGRAPH by hand saw press Kyoto 2025 

初夏の演奏会 2025
Concert at Honen-in temple, Kyoto
2025年5月24日(土)
[京都] 法然院

出演|mama!milk
アコーディオン 生駒祐子
コントラバス 清水恒輔

美術 | かなもりゆうこ

エッセイ | 村松美賀子
食堂協力 | 酒家喫茶かしはて

リソグラフ印刷 | hand saw press Kyoto
題字 | Takemura Kappan

協力 | 小田朔美

制作協力 | 株)アクティブ ケイ
主催 | MUSICA MOSCHATA


More Info ▶︎ [[ SCHEDULE ]] 2025年5月24日(土) [京都] 初夏の演奏会 Concert at Honen-in temple, Kyoto


 

photo by Yuko Kanamori, Megumi Tokuno, Mikako Muramatsu, Yuko Ikoma