mama!milk / Latitudeレコードコンサート「アフタートークで訊いてみたいこと」

2026年7月5日に開催されたレコードコンサート「mama!milk「Latitude」Vinyl & Talk」へお越しくださり、ありがとうございました。
お寄せくださいました「アフタートークで訊いてみたいこと」へ、当日にお答えしきれなかった分もあわせて、こちらで回答いたしました。どうぞご覧ください。

shirasagi/白鷺美術 23 anniversary mama!milk Two “Latitude”

2026年7月5日(日) [ 金沢 ]  shirasagi 1F

Latitude – Vinyl & Talk

レコードコンサート|
mama!milk / Latitude

アフタートーク|
生駒祐子 ( アコーディオン / mama!milk )
清水恒輔 ( コントラバス / mama!milk )
南知子 ( デザイナー / stompdesign )
大平明子 ( アーキビスト / 金沢21世紀美術館 )

進行|巽勇太 ( 白鷺美術 )

 


アフタートークより


巽勇太 ( 以下、巽 )
まず、レコードを聴いて、どうでしたか?

清水恒輔 ( 以下、清水 )
CD、LPの制作に入る前はデジタル向きの音源かも、と思っていましたが、こうして聞くとまた違った広がりや圧を感じられて興味深かったです。
盤の溝によって生じた針の微細な振動が電気信号となり、その信号が真空管内を飛ぶ電子の流れを制御し、増幅されて音楽になる。面白いですね。

大平明子 ( 以下、大平 )
当時体験できなかったのもありますが、とても新鮮でした。知っている情報を取り払って聴くと、水が落ちてきて、音という水蒸気になって空間に立ち上がってまた空に戻るような循環を感じました。

南知子 ( 以下、南 )
会場内に音と空気感、雨までもが充満して、まさに「体感」という感じがして気持ちよかったです。この新鮮な感じ、生々しさも20年前のものなんですよね〜ーと思いながら、、。

生駒祐子 ( 以下、生駒 )
金沢21世紀美術館 ( 以下、美術館 ) での演奏のレコードですけれど、ここで聴くと、shirasagi の響きも合わさって、新しい表情になりますね。おもしろいですね。

 

「アフタートークで訊いてみたいこと」より



Q 雨の音が今の季節、また今夜の天気にぴったりで、すごく心地良く聴かせていただきました。この曲はどのようなイメージ、思いもこめて作られたのでしょうか?


生駒
心地良かったですね。私は窓辺で聴いていましたけれど、今日の雨の気配にレコードの雨の音が混ざって楽しかったです。
この曲は、余韻と一緒に遊ぶイメージで作りましたよ。余韻、反響、空間の音の響きですね。初めてリハーサルをさせていただいた時、色々な余韻があってびっくりしたんです。高くて澄んだ余韻とか、低くてやわらかい余韻とか。それがとっても素敵なので、アコーディオンとコントラバスと余韻のアンサンブルになるように、と。


Q また「ラティチュード」とはどのような意味なのでしょうか?


清水
「Latitude」馴染み深い意味では、地理的な経度を表しますが、「許容度・自由度・裁量・余地」という意味もあり、「その場所を示す座標であり、そこから広がる自由な世界。」といったイメージでしょうか。写真用語では、再現できる露光の範囲、寛容度を示すようです。
このコンサートの組曲から生まれた、「Quittude」という作品があるのですが、その作品との関係性も感じられる語彙を選びました。

 



Q 小説を読んでいるような、映画を見ているような、体を預けているような、気持ちで聴いていました。小穏があり、よろこびがあり、現実があり、向こう側の景色があり、終わって欲しくない人生がありました。トークで聞いてみたいことは、お二人の演奏している時に息を合わせる技について、どのような工夫があるか。知りたいです。


清水
呼吸と所作ですね。カウントをして、時間を縦に割って行くのではなく、一つ一つの音の対話が律動を作って行きます。

生駒
とにかく聴きます。コントラバスの鳴る音も、音をだすための所作の音も。弓を弦にあてる直前の呼吸とか、弓が弦から離れたな、とか全部聴いています。

 



Q 青空、夕ぐれどき、曇天、星空、暗やみ、どんな時にどの曲を弾いてみたいですか。それは、何故ですか。


清水
どの曲もいろんな状況で弾いてみると、違った光景が見えてきたりします。その意外さが面白いこともあります。その光景は聴いている人もそれぞれに違うのだろうと思います。なので、とても曖昧で流動的ですね。


Q 自然の音との共演が多いと思うのですが、室内のときと、何か、演奏する上でのちがいはありますか。


生駒
考えてみると「自然の音/室内のとき」のちがいがありませんね。どちらも、その時に聞こえる全部の音と共演している感覚です。
例えば、美術館の空間は、自然の音と室内の反響がまざりあう場所。演奏中に雨の音だけでなく、金沢の街の音も聞こえてきましたね。ここshirasagi は親密な、こんな風にお一人お一人の声に耳を澄ます場所。9月に演奏させていただく金沢アートグミ ( ※1 ) は、昭和の銀行建築らしく、どこかずっしりした響きのある場所。
それぞれの場所の音と共演していると、演奏の仕方も全くちがってきますね。


Q いつも素敵なフライヤー、ありがとうございます。円がよくでてくると恩うのですが、何かイメージしているものはありますか。



ありがとうございます。円といえば、ヴァニラという曲のために円の楽譜を作ったこと、それをある冬、シラサギでの演奏会のフライヤーにも使ったことがあります。ヴァニラは繰り返し繰り返すフレーズが印象的で、ずっと聴いていたい、いっそ終わらなければいい!と楽譜を円にしました。円形に組んでからmama!milkのふたりに色々と指摘してもらって最終的にとても綺麗な円楽譜になって、機会があればまた使いたいです。
イメージしているのはその時々のmama!milkです。全体的にわたしにとってかなり曲線や螺旋に似ているので円を感じさせるデザインになりがちですが、自分の描く曲線の変化でmama!milkの変化に気づくこともあり面白いです。


Q 創作活動をしている上で大切にされていることはありますか ( mama!milkさんにもうかがいたいです。)



可能な限り ( 少々無理をしても ) 色々なものを見たり聴いたりすること、展覧会や演奏会に限らず景色でも映画でもライブでも何でもアリですが、その時できるだけ自分を開いて考えないこと。自分の意思をあまり介入させずに身体に見せたり聴かせたりしまくっておくと、必要な時に身体の方から何か蘇ってきてくれる気がします。だいたいいつもデザインする対象によく似合う、似た印象のものを作ろうとしています。その印象も自分の主観ですけど、そこから組み立ててどこまで近づけるかみたいな。「Latitude」ははじめ漠然と「陸の無い地図」のイメージで、具体的に天気図と雨というのはすぐに出てきましたが、二つの距離が近過ぎて天気図と雨の間に空間を発生させるのに苦労しました。何とか良い感じにすることができて、思うイメージになるまで粘ることも大事と改めて思いました。

清水
創作にも色々ありますが、まずは目の前に立ち現れたものを俯瞰することから始めるような気がします。そこから省くもの、足らないものを探したり。創作と発見の境目はとてもあやふやですね。あとは、根拠のない閃き。理由は後で考えます。

生駒
どうしても自分の心身がそのまま音楽になってしまうので、日々の暮らしそのものが創作活動だと思うようになりました。美味しく食べたり、気持ちよく眠ったり、身体をメンテナンスしたり、誰かと何かを共にしたり。そのために大切にすることと、音楽を作る時のそれは、結局同じものだなぁ、と感じています。
大平さんは、アーキビストというお仕事の上で大切にされていることはありますか?

大平
自己をあまり介在させないというのは私も大切ですね。例えばコレクターは網羅的に関連する情報や物を集めますけど、ときに個人的な嗜好が入ったりします。アーカイブは歴史を扱うので、それをすると事実が歪む可能性が高まりますから、扱う記録に対してバイアスをかけないようにしています。特に美術館は現在進行形で歴史が刻まれていますので、実はプログラムについても、内側の人間としては一線を引いて接しています。
あとは、なるべくプロセスも拾うこと。今回も結果としては1枚のフライヤーと音源が残っていたけれど、そこにまつわる経緯や思いは今回お話頂いて初めて見えてきた。人が知りたいことって事実だけでなく、なぜ?どうして?って部分もあるので、残るものは残せればと思います。

生駒
巽さんは、shirasagi / 白鷺美術の活動で大切にされていることはありますか?


毎回、一期一会のように感じています。幾度と一緒に活動しているアーティストであっても、その都度の出会いが必ずあり、その中でできることを考慮し、皆が愉しめるような形にしていけたらと思っています。


Q 何度もこの空間で演奏されていると思うのですが、いつも新鮮な気持ちで、きいています。みなさんにとっての白鷺美術はどんなところですか。


大平
気を抜いて楽しめる空間です。明暗と音楽と静けさ、会話が程よく調和しているというか、一つの軸がある空間で安心します。展示期間中の昼間に珈琲を飲みながら見る景色も好きです。


演奏会や展示ではその都度違った素敵さを見せてくれ、そうでない時は作業の場でもあり、対話の場でもあり、なので実験空間みたいな感じ。随所にこだわりがあるかと思えばすっぽり受け入れてくれたりするところ。昼と夜の落差も好きです。

清水
何かを投げかけてくれる場所です。何度も何度も演奏してるが故に、新鮮な気持ちで向き合うには、自分の中で何か新しい扉を開く必要があるので、それを見つける時間がとても大切です。

生駒
おかげさまで、何度も、と言っていただけるくらいの月日がたちました。
来る度に「ただいま」という気持ちになります。そして、いつも思っていたより金木犀が大きくなっていてびっくりします。
思えば、白鷺美術・巽さんと、色々なことをご一緒させていただいてきました。
その中でも、「麋角解」 ( ※2 ) が毎年続いてきたことに、白鷺美術の在り方、佇まいのようなものを感じます。パンデミックの時でも、会場をアートグミへ変更しながら、私たちが芸術というものを手放さないでいられる機会を作ってくださいました。演奏の時はいつも、同じ時期にここで展示をされる作家さんに出会えることも嬉しいことです。


Q 秋の演奏会も楽しみにしいます


生駒
9月27日のアートグミでの演奏会 ( ※1 ) 、私も楽しみです。

 



Q 最後の曲が宗教音楽のような、教会でパイプオルガンを聴いてるのかと思うほど荘厳な感覚になりました。20年前の金沢と、現在で変わったところ。変わらないところ、何か印象的なことなどありましたら、おききしたいです。


清水
もう20年以上、毎年のように訪れている金沢ですが、もう無くなってしまったお店、新しくできたお店、しばらく会えなくなった人や、最近出会った人がいて。自分を取り巻く環境は、どこにいても同じような変化を感じますが、白鷺とはもう23年のお付き合い。変わっていない部分もあるのですが、やはり変化し続けているようにも思います。その変化が長く続けている理由だと思います。


金沢では21世紀美術館、新幹線等の影響もあり、海外からも多くいらしていただけるようになりました。また以前は伝統工芸等、土着的な側面が多くありましたが、現在は新しい芸術文化も生まれる街になったと感じています。また改めてこの20年、インターネットの台頭で世界が近くなり、この金沢に居ても様々な影響を感じます。そして本当に色々なことがあった20年に思います。


新幹線の開通以降人が増え、まちの在り方(意思のようなもの)など変わった気がします。あと天気の曖昧な日が減り、雪の日のほぼ無彩色で灰色の日が好きですが(ずっとはイヤですが)すごく少なくなった気がして残念です。わたしは度々mama!milkに対して「揺るぎなく揺らぎ続ける」という言葉を使うのですが、引き続き、変わらず変わり続けて欲しいです。

大平
仕事柄、美術館のフライヤーをみると、音楽との関係は初期から実験音楽的な傾向やサイトスペシフィックな演奏があって。これは根底的には変わっていないのですが、クラッシックなどの様々な音楽とアートのコラボレーションを聴かせる音楽の時期があり、近年は没入型サウンド・インスタレーションやアンビエントな方向に変化しているようにみえます。

生駒
最後の曲、「an Ode」という曲ですね。20年前も今も変わらず弾いていて、驚いてしまいます。
変わったと感じるのは、南さんもおっしゃる通りのお天気ですね。以前は、冬の雲がたれこめた鈍い光の中でこそ九谷焼の鮮やかさが一層映える、という谷崎潤一郎の意見にうなづいたりしていました。最近は冬も明るくなったように感じます。
その分「麋角解 ( ※2 ) 」の演奏会の日に雪が降るとちょっと安心します。足元大変!ですけれど。

 



Q 素敵なコンサートをありがとうございました。水音の響きわたる環境が、特に印象的でした。何かつらいことやアクシデントが起きたりと、心がざわめくとき、心を落ちつけるために水の中を自分が流れていくようなイメージを
想像したりすることがあり、聴いているなかで今回、とても、自分と向き合うような感覚がありました。(感想です
質問は、演奏とは関係しないことで恐縮ですが、みなさま、心を落ちつけたいときに行うことはありますか?


清水
料理とお掃除です。自ら手を動かして、結果がダイレクトなので心落ち着きます。

大平
料理は私もします。真夜中にクッキー焼いたりとか()あとはひたすら音楽を聴きます。心が乱れているときほど、重い楽曲を。集中・耽溺しきることで0地点に戻ります。


私も料理は気分転換になります。あとは猫が複数いるので次々と撫でたり吸ったりします。
あてもなくラクガキを始めます。複雑めな無機物を延々と描いてると何も考えなくなります。

生駒
お料理、良いですね。新鮮な野菜やお魚に出会うとそれだけで嬉しくなります。植物の手入れやヨガも心落ち着きます。新聞を読むのも好きです。


よく空を眺めて写真を撮っています。あと蝋燭を灯す生活を始めて30年が過ぎました。

 



Q 優しく、世界をつつむ祈りの様な時もあれば、とつぜんその世界を切りさいて行くアコーぞイオンとブっといベースの時もあり、聴いててる時は自分の人生を思いうかべるというよりは、今まで見てきた映画の断片がフラッシュバックしてくる感じでした。ラストのやさしい人々がくらしている国歌の様な曲を聴くと、戦争そろそろやめてほしいと、なけてきましたよ。


生駒
なけてきますね。そろそろいい加減にして、どちらもちょっと休みましょう、みんなでディナーでもご一緒しましょう、mama!milkでよろしければちょっと演奏しましょう、と思います。

清水
泣けてくることはたくさんありますが、まずは、この場を、近しい関係を整えていくしか無いのかな、と。その輪が世界中に広がることを願っています。


ですよね。そろそろやめて欲しいですよね。自分も手の届く範囲のことでいっぱいで、でも一人残らず全力で手を伸ばせば、世界はその範囲に収まるのかも?とか思いながら出来ることをやるしかないですね。


皆が集い、一緒に時を過ごすことが、どれほど愛しいひとときであるか、年々想うところがあります。こうしたことが平和な世界に繋がってほしいと願います。

 



Q 皆さま長いお付き合いになったかと思いますが。出会った当初のお互いの印象、エピソード、その後年月を経て印象の変化はあったのか等お聞きできると幸いです。


清水
勇太くん、南さんと初めて協働者としてお会いしたのは、別の方の企画で演奏会で金沢を訪れた時のことだと思います。勇太くんはそのイベントのBGMの選曲を、南さんはフライヤーのデザインを担当されていて、二人とも口数少なく、なんともまぁ、美しいものが好きなお二人だな、と思いました。
その前に新天地の初代shirasagiに、また別の企画の打ち上げで行ったような気もしますが、どっちが先だったか定かではありません。
その後は、事あるごとに主催・演出を白鷺美術が、デザインを南さんが、と、その時々に興味の赴くまま、本当にたくさんの場をご一緒してきましたね。印象の変化というか、お互いに殻が無くなっていく感じですね。あけすけに。
大平さんとは、今回のことで初めてお会いしました。出逢いたてですが、美術館との交渉や作品扱い方などについて相談に乗っていただき、窓口になってくださいました。頼もしかったです。

生駒
今回のことというのは、金沢21世紀美術館での演奏の録音がレコード盤になるまでの色々ですね。大平さんに大きなご協力をいただきましたけれど、大平さんはどのように shirasagi や勇太くんと出会われたのですか?

大平
直接のきっかけは曖昧なのですが、金沢に実家があるので帰省の度に素敵な建物があるなとshirasagi自体は気になっていたんです。数年前に美術館とご縁を頂いて戻ってきて、職場でも話題になっていたので、ある日仕事帰りに寄ってみたのだと思います。居心地がよかったのと、mama!milkさんの音楽が流れてきたので、おっ!っとなって。実は、mama!milkさんについては他のアーティストさんと発表されている「Gigolo」という曲をきっかけに、かなり以前から聴いていて。巽さんから毎年演奏会をしていると教えて頂き、それ以来たまに来るようになって、という感じです。

生駒
大平さん、「Gigolo」を聴いていてくださっていたのですね。あの曲は2000年の発表でしたから美術館でのコンサートよりも前ですね。「Gigoro」の録音でも、その空間のどこで誰が演奏するかなど、みんなで色々工夫しました。そういうことも、美術館の空間に合わせた「Latitude」の作曲に繋がっていたのかな、と思います。
ところで、この「Latitude」が美術館にアーカイブされると聞きました。手にとって見られるのですか?試聴もできるのですか?
これまでのフライヤーを眺めるだけでも面白そうですけれど、他にアーカイブされているものはありますか?

大平
はい、学生の頃から比較的オルタナティヴな楽曲を聴くことが多くて、その流れで辿り着きました。美術館よりmama!milkさんとの出会いは早いと思います、多分。ちなみに私の中では「Latitude」空間イメージが野外なら「Gigoro」は空間的には夜のバーです。それこそshirasagiみたいな暗さの。
さて、本題ですけれど「Latitude」に関してはCD、レコードともに美術館にアーカイブされています。このうちCDについては、制作関係者の皆様のご厚意もあり、アートライブラリで視聴できます。ご希望の場合は、カウンターのスタッフにお尋ねいただけると。
美術館のアーカイブとしては、主催事業で発行したフライヤー、ポスター、DM、チケット、図書類、画像・映像などがありますけれど、整備や諸権利の課題があり残念ながら現在は一般公開はしていません。実は、その中には当時のイベントフライヤーがあったりします。それも1枚だけ。
そして、このたった1枚のフライヤーには、記録の整理中に発見され、数日もしないうちに音源発表のお話がきたという裏話があります。ごく個人的には一資料を超えた、引き寄せのフライヤーです。


mama!milkとの出会いは、お店をする以前、沖縄に住んでいた頃に、2枚目のアルバム「Lumb and Mutton」を手にとったことから始まりました。その頃、何か日本の音楽シーンに惹かれなくなり、海外の作品を求めていたのですが、このアルバムの儚く、ノスタルジックな世界観に忽ちに魅せられました。そして2003年に帰郷し、お店を始め、この音源を流していた時に金沢でmama!milkの演奏会があると聞き伺いました。それからは今日に至るまで、長く一緒に制作させていただいています。もう23年になりますが、毎回が新鮮です。
デザイナーの南さんとは、私がmama!millkと携わる最初のデザインでご一緒して、それからはずっと様々なことをお願いをしています。ここでも毎回、すんなり仕上がったことはありません(笑)南さんとの制作は不思議な面白さがあります。
大平さんとの出会いは、mama!milkの演奏会にいらしていただいたことからだったと記憶しています。こうしたご縁の中、今回のアルバム、「Latitude」の21世紀美術館サイドで制作にご協力いただけたのは本当に嬉しいことでした。今回のアンケートのコメントも大平さんならではの感性がとても愉しいです。


2003年ぐらいだと思いますがイベントのフライヤを作らせていただいた時が初対面です。音も見た目も美しくソリッドで本当に格好良くて、お話ししてみるとさらにエレガントで、、
それから本当に長くご一緒させていただいていますが、2007年にアルバムのアートワーク(esquisse Yuko Ikoma)を初めてやらせていただいた時に、祐子さんと長く長くお話して、色々と考えさせられ今までのやり方ではダメだ!と私的に大転換期になりました。具体的には言葉から考えるのをやめる必要があったし、自分の「身体」との付合い方も変わりました。それからずっと、今でもそうです。mama!milkと向き合うときはいつも以上に厳しく自分とも向き合う必要がある、うまく言えませんがそうじゃないと追いつけない感じで。色々な面でもの凄く鍛えられていて、感謝してもしきれないので自分のできる事で返せるように、すっごくいいものを作れるように!と思ってます。エピソードは、、とても書き切れません。本になってしまう。

清水
南さんと白鷺の出会いは?僕たちより長いですよね?


それが、ほとんど同時です。上の話に出たイベントのフライヤに使う写真が勇太さんが撮ったもので(ガラスの天使像でした)それでデザインして見せた時が初対面じゃなかったかと思います。ただ周りの友人たちはすでに勇太さんと仲良くされていて色々とお話は聞こえていたのですぐに親しくなれました。それから色々とご一緒させていただいたり、色々と教えてもらったり。個人的にはメトロポリスの「装置」が増殖してゆくのを楽しみにしています。

生駒
出会った頃に巽さんが写真集「dolls」「moderate」を発表されて、そのアートディレクションを南さんがされてて。和綴じ製本で美しくて、あぁ、とんでもないお二人!金沢はすごい街だなぁ、と衝撃をうけました。
その頃にあった mama!milkのヨーロッパツアー写真展の会場の一つが新天地の shirasagi だったんです。お店が真っ黒で真っ暗なことも驚きましたけれど、現地から送った写真データを南さんが展示作品に仕立てくださり、それを懐中電灯で見るという趣向にはさらに驚いて、その後にここ、柿木畠の shirasagi ができた時には「shirasagi がこんなに白くて明るいなんて!」とまた驚いてしまいました。今、この「白」は「dolls」「moderate」から通奏低音のように流れている巽さんの「白」という印象があります。
それからの色々、美術家としての巽さんとは金沢だけでなく、京都や東京、横浜でも舞台作品をご一緒してきましたし、南さんが担当くださったmama!milkのアートワークも数えきれなくなりました。
演奏会のプログラムが、南さんのデザインに導かれて仕上がっていくことも多いのですけれど、今作の「Latitude」では、南さんのデザインが、20年前の演奏の輪郭を作ってくれるように感じました。
南さんは「Latitude」のアートワーク、どんなところが気に入っていますか?


あのヨーロッパの写真!よく覚えてます。ヨーロッパにいるmama!milkからポツポツとメールが来て「あ、写真届いてる♪」って、いそいそレイアウトして、文字を組んで、、その工程も楽しかったです。
そして「Latitude」これもまた、よく覚えているあの日のこと。改めて録音を聴きながら自分の中のあの日の印象をしっかりと捕まえようとしてました。モチーフはすぐに決まったものの「?」何かが足りないという思いで少々立ち止まってしまって、あのあまり時間に余裕のない中で数日手を止めて考えていたことはとても自分を追い詰める、間に合わなかったらどうすんだ!という危険行為でした。天気図と波紋が「近すぎる」問題を解決できたことが嬉しくてほっとしてましたが、CD発売の時の宣伝リール動画で、ジャケットのビジュアルが浮かび上がり、雨音とともに曲が流れてきたのを見た時、とてもよく似合っている!と素直に思えた事が本当に嬉しくて、何度も見ました。「Latitude」のアートワークで気に入っているところは、中身の音楽によく似合っているところです。いつもmama!milkのひと言では言い表せない素晴らしい音楽の衣装として見合うアートワークを!と思い、手を動かす前に繰り返し聴いて自分の中がそれだけになるみたいにするのですが、聴いていると自室にいながら本当にいろんな所、いろんな場面へ連れて行かれます。(それもまた楽しく、デザインのヒントにもなります)
もう一つ、CDとレコード、それぞれに変えているところ、LPはCDより広範囲になっているところです。本当はもっとずっと広いモノから切り取ったイメージで。
聴きながらみなさんの頭の中で波紋が動いてくれたら、、流れる音楽の隙間に繰り返し広がっては消えてまた広がる波紋や密やかな空気の流れとかも感じてもらえたら嬉しいです。


アートワーク by stompdesign 南知子



Q 夫の影響でファンになりました!28年来のファンである夫と夜に聴いています。


生駒
もしかしたら、mama!milkのファーストアルバムから聴いてくださっていますでしょうか。なんてことでしょう。ありがとうございます。


Q 今回のアルバムのベストな時間帯はありますか?


清水
ふと、耳が空いた時間にどうぞ。


雨が降ると何度となく流したくなり聴きました。寝入りも最高です。

大平
雨の降る日に、よろしければ美術館のアートライブラリーでどうぞ。

生駒
朝と夜、秋と春、など色々な時の聴き比べもおすすめしたいです。


蝋燭もおすすめします。

 



Q 本日はmama!milk vinyl & talk. 素敵なお時間をありがとうございます。いつも実験的なライブが好きなのですが、方向性などは、どのように決まるのでしょうか。
水が喜ぶ姿を見ました。今日が雨でよかったです。


生駒
今夜、嬉しいひとときとなりました。こちらこそ、ありがとうございます。
ライブの内容はいつも、その場のことを見たり聞いたりする中で決まっていきます。
例えば「麋角解 ( ※2 ) 」では、美術作家さんの展示期間中に、mama!milkの演奏をさせていただきます。
その時は、巽さんの演出のアイデアや、展示作品に繋がっていくような組曲を作るのですけれど、いつも作家さんや巽さんが立ち上げる世界観と一緒に遊ぶような気持ちです。21世紀美術館の空間の音の響き方に合わせたら「Latitude」が出来たのと同じですね。
それが実験的に見えるかもしれません。
本日は、9月のコンサート ( ※1 ) でご一緒する三崎さんの展覧会 ( ※3 ) を拝見してきました。その光景も心に浮かべながら、これから9月のコンサートの組曲を作っていきます。楽しみです。

 



Q mama!milkさんの大ファンです!いつも美しい街や素敵な場所で演奏を続けてこられましたが、そもそも金沢とのご縁は?
(白鷺美術さんとのご縁は?)良かったら教えて下さい!この美しい街とも音楽の世界観がとてもお似合いです。これからも楽しみにしております❤︎


清水
金沢在住のかたでしょうか。何より、この街を美しい街、と呼べるのが素晴らしいですね。
とあるオーガナイザーの企画で呼んでいただいたのが始まりで、それはDJも入るようなクラブイベントでした。
その時ご一緒した方に、いろんな場所、人を繋いでいただき、いろんな場所で演奏を重ねていたのですが、その中で白鷺美術とも出会いました。

生駒
金沢の街や人の美しさを最初に教えてくれたのは泉鏡花でした。はじめて訪れた時は、お座敷の壁の色が赤かったり青かったり艶やかなことも印象的でした。
白鷺美術の巽さん。選曲家としてお会いしたのが最初だったでしょうか。選曲をまとめたCD-Rが素敵で、mama!milkの演奏に行く先々でかけてもらったりしていました。色々な街で「これは誰?」と聞かれる度に「金沢の…」とお話ししたり。それから、写真家、shirasagiのマスターとして、それから、演出家としては金沢のあちこちだけでなく、白山の和田屋さんや、東京の原美術館でのコンサートもご一緒しましたね。

 



Q ご自身の演奏を開くときの気持ちを教えていただけたらしいです!


生駒
色々な気持ちになりますね。え、アコーディオン、こんなことしてたの!?と驚いたり、あぁ、もっと練習を、と思ったり。
「Latitude」は演奏する空間の響きに合わせて作った最初の組曲ですけれど、この時の色々が今のmama!milkの礎になっているな、と思います。

清水
こっそり聴きたい時もあります。確認、反省が纏わりついてきたりもしますので。
音源を作っている時は、何度も何度も聴きます。

 



Q mama!milkさんの”音”と”アナログ”の相性はすごく合ってると思いますが、ご本人さんたちは、どう思われているのでしょうか?


清水
アナログはメディアとして好きなので、音源が盤になるととても嬉しいです。ジャケットが大きいのも良いですね。

生駒
アナログ、レコード盤ですね。レコード盤って、溝に刻まれた凸凹に針が触れて音になりますよね。シンプルでタフだなぁ、と思います。アコーディオンやコントラバスも、楽器に手で触れて音を作っていくので、親近感を感じます。

 



Q 雨や音の残響で景色が立ちあがってくるような素敵な時問でした。お二人の演奏されているコントラバス、アコーデンオンとどのようにして出会われたのかを伺ってみたいです。


清水
新品より、誰かの手で弾かれていたものを探していて、楽器工房に通って試奏させてもらって、今の楽器と出会いました。何度も修理を重ねています。

生駒
イタリアから日本に来てからずっと楽器店の隅っこに忘れられていたようで、出会った時はあちこち大変なことになっていて、ひとつずつ壁を乗り越えながら知り合ってきた気持ちです。日本でもイタリアでも数々の職人さんに調整してもらっています。この楽器を作ったゲリーニさんにお会いした時に「私が作った楽器があなたに会えて良かった」と喜んでもらえたことが自慢です。

 



Q 金沢21美のオファーは主催者サイドか、もしくはmama!milkサイド、いずれから始まったのか。その時の意図や狙い、想いがあったのであれば、それはどのようなものか。また実際に演奏して.どのような印象だったか、思った通りだったか、想像外なことがあったか。など。


清水
当時の金沢のNPO団体と、美術館で立ち上げたシリーズ化を目指した企画で、その第一回の出演がmama!milkでした。
シリーズ化はなりませんでしたが、こうして音源を残せて良かったです。
演奏会は、こちらでコントロールできない雨や長い残響など、全てを受け入れることから始めて、空間と存分に遊ぶ印象でしたね。

 



Q お2人の出会いを教えてください。


清水
京都で、それぞれ別の音楽活動をしていて、お互いに知ってはいたのですが、祐子さんのプロジェクトに誘われて参加したのが始まりですね。

生駒
その頃、どんなバンドのライブを見に行っても、あ、またあの人が弾いてる、って。パンクだったり、ロックだったり、アコースティックだったり。なんだか気になってドキドキしながら話しかけた気がします。恒輔さん、ちょっとこわいお兄さん、って感じでしたから。

 



Q こちらで初めてきかせて頂き感動いたしました。コロナの時に白山市の料理屋さんでのコンサートは行けなくて残念。何年かぶりのアコーディオン、仕事帰りにダッシュで来ました。これからもどんどんこちらで聴かせて下さい。ありがとうございました。
今レコードをききました。どんどん溶け込まれ、睡魔におそわれ波をうってしまいました。ごめんなさい。最後は聞きごこちが良くていやされた時間でした。9月も楽しみです。ありがとう❤︎❤︎


生駒
コロナの頃は色々ありましたけれど、こうして今夜のような時間をご一緒できて嬉しいです。9月のコンサート ( ※1 ) も良い時間となりますよう準備して参ります。どうぞご期待ください❤︎❤︎❤︎

 



Q レコードを聴いても、生駒さん、清水さんが演奏されている姿が思い浮かんできます。20年が経って変わったこと、あるいは変わっていないこと。教えてください。


清水
20年経てば、随分と変わってるんだろうとも思うのですが、いつも、今、ここで出せる一番良い音を探してるので、そこは変わってないんだろうと思います。

生駒
20年経っても変わらず演奏している曲があることに驚きます。変わったことといえば、このレコードで演奏している曲も、20年の間に色々なアンサンブルで演奏されたり、誰かのレパートリーになったりしながら新しい表情をみせているのが嬉しいことです。
私はこの頃は、mama!milkの曲を小さなアコーディオンで弾ける楽譜にして残しておきたいと思うようになりました。

 



Q お越しくださった皆さんへメッセージがありましたら。



皆さまお越しくださりありがとうございました。だいたいの方がmama!milkがお好きで足を運ばれたと思いますが(それは今後も是非ともお楽しみに!)
わたしはたくさんの人が集まって一枚のレコードを黙って聴く、という演奏会ともDJイベントとも違うこの会(現象?)が面白くて。またの機会にぜひまた集まって、黙って、聴きましょう。

清水
試聴からトークまで、穏やかな時間を過ごせました。この一枚を聴いている皆さんの後ろ姿を眺めながら一緒に自分の演奏をきくのは、視点が複数あるような不思議な感覚で、演奏会とはまた違う愉しみですね。
9月の演奏会(※1)も楽しみにしています。

生駒
実は、今日は自分が演奏したことも忘れて、ただただレコードと今夜の雨の音を聴いていました。そんな時間をご一緒できて嬉しいです。またここで、色々なレコードをこんな風に聴いてみたいです。
白鷺美術のレコード・コンサート、次回も是非ご一緒しましょう。


皆さま、「Latitude」レコードコンサートへお越しいただき、またアンケートの素敵なご質問をありがとうございました。
白鷺美術23周年企画、金沢アートグミでの「Latitude」サイトスペシフィック・コンサートももうまもなくです。この会場ならではの演出、モビールの三崎大地さん、南知子さんのデザインをはじめ、素敵なコンサートになるよう精一杯努めさせていただきます。また皆さまとご一緒できますと嬉しい限りです。



(※1)2026年9月27日 shirasagi / 白鷺美術 23 anniversary「mama!milk / Latitude Site-specific concert」@金沢アートグミ
(※2)白鷺美術が主宰する冬の冬の演奏会と展覧会。演奏会は毎年12月27日に開催され、mama!milkが出演している。
(※3)「IKERU NONOICHI 三崎大地 x 太田魁 漂着する風景 展」於 国指定重要文化財 喜多家住宅

 



shirasagi/白鷺美術 23 anniversary mama!milk Two “Latitude”

2026年9月27日(日) [ 金沢 ]  アートグミ

Latitude – サイトスペシフィック・コンサート

演 奏:mama!milk
生駒祐子 : アコーディオン
清水恒輔:コントラバス

モビール:三崎大地
デザイン:南知子 (stompdesign)
演 出:巽勇太 (白鷺美術)

ケータリング:ひらみぱん

*

主宰よりご挨拶

shirasagi/白鷺美術 23 anniversary mama!milk Two “Latitude”

この秋にお陰さまにて shirasagi/白鷺美術は23周年を迎えることとなりました。
これも皆様のご愛顧の賜物と心より御礼申し上げます。
今回、演奏で出演いただくmama!milkは店舗を立ち上げた2003年より親交があり、その3年後の2006年に金沢21世紀美術館内で行われたコンサートの音源が今春発表の新作「Latitude」となりました 。
mama!milkは今も変わらず、場所や人の中でその瞬間を感じて演奏するサイトスペシフィックな姿勢を大切にしています。20年前に録音されたこの「Latitude」も、あの場所、あの瞬間にしかない景色を奏でており、今聴いても決して色褪せることなく、寧ろ、そのノスタルジックなひとときさえも、今に響く、新たな世界として感じさせてくれます。
本年、7月5日(日)に会場、白鷺美術にて、真空管アンプを用いての「Latitude」レコードコンサートを行います。またmama!milkの生駒祐子さん、清水恒輔さん、アートワークを担当した南知子さん、 金沢21世紀美術館 アーキビストの大平明子さんとの歓談もございます。
9月27日(日)は、1943年に建てられた趣ある建物内、金沢アートグミにて、「Latitude」サイトスペシフィック・コンサートを行います。三崎大地さんのモビールに、演出は白鷺美術が担当します。そしてケータリングにビストロカフェのひらみぱん。
9月27日、丁度この日は白鷺美術の23周年にあたり、このようなご縁の中で行えますこと、誠に嬉しい限りです。皆さまのご参加、心よりお待ちしております。
白鷺美術主宰 巽 勇太

 

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mama!milk / Latitude
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